―世に数多の妖刀あり―
――それは、ひとたび抜かれれば血を吸わずにはおられぬ刀。
神気を帯びた名刀でさえ、恨みの血糊に長く浸れば陰気、妖気を生じて妖刀に変ずるという。
それを手にした者は人斬りに魅せられ、果ては必ず持ち主に祟って非業の最期を招くとか。
時は元禄、将軍徳川綱吉の治世。太平の世に妖しの気配。
妖刀をめぐって入り乱れし者らの、欲が義が迷いが争いが
魑魅魍魎を招きよせ、龍神鬼神をも巻き込んで災いの火を広げゆく。
妖刀に曳かれし者らの運命は、果たしていかなる結末か。
美濃国鳴神藩の姫。
花か雪かと見間違うほどのそれはそれは美しい姫。
ある日、悪霊に取り憑かれ、体の自由を奪われてしまう。その後、姫は城を飛び出し、行方不明となった。
抜け忍として追われる少年。
過去の記憶が無く、抜け忍となったことや、そうなった経緯も覚えていない。
しかし、内から湧き出る強烈な「刀」を求める思いに突き動かされ、戦いに身を投じる。